別居中や離婚後の夫(妻)からの「つきまとい」に対する対応策について色々と解説します
この記事を書いたのは:木下 敏秀
1 別居中や離婚後の夫婦間のトラブルが増えています
別居中や離婚後の夫婦間において、生活費(婚姻費用分担金)や子の面会交流等のトラブルは色々ありますが、「つきまとい」に関するトラブルも増えています。
自宅や勤務先に訪問するとか、何度も電話をしてくる等の「つきまとい」の内容も様々ですが、トラブルが長期化する事例もあります。その心理的負担は大きく、恐怖心から仕事ができない、全ての連絡手段を断つしかない等の影響が大きい事案も少なくありません。
この「つきまとい」に対する対応策について以下で解説します。
2 ストーカー規制法による対応策
被害を受けている当事者の住所地を管轄する警察本部等に対してつきまとい等に係る警告を求める旨の申出をすることができます。
ストーカー規制法の規定する「つきまとい」等の類型としては以下の類型があります。
① つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつき
② 監視していると告げる
③ 面会、交際等の要求
④ 著しく粗野又は乱暴な言動
⑤ 無言電話、連続した電話・メール・SNSのメッセージ等
⑥ 汚物などの送付
⑦ 名誉を傷つける行為
⑧ 性的羞恥心の侵害
警察本部等は、警告を求める旨の申し出を受けた場合、つきまとい等の行為者に対し、更に反復してつきまとい等を行ってはならない旨を「警告」することができます(ストーカー規制法第4条)。
都道府県公安委員会は、行為者が更に反復してつきまとい等を行うおそれがあると認めるときは、行為者に対して「禁止命令」を発令することができます(ストーカー規制法第5条)。禁止命令は、罰則がありますので、事案によっては行為者が逮捕される事例もあります。
警察本部長等は、ストーカー行為等を受けている被害者から援助を受けたい旨の申し出があれば、必要な援助を行うことになっています(ストーカー規制法第7条)。
援助には次のような内容があります。
① 被害防止交渉を円滑に行うために必要な事項の連絡
② 行為者の氏名及び住所その他の連絡先の教示
③ 被害防止交渉を行う際の心構え、交渉方法等の助言
④ ストーカー行為等の被害防止に関する活動を行っている民間の団体その他の組織の紹介
⑤ 被害防止交渉を行う場所として警察施設を利用させること
⑥ 防犯ブザーその他ストーカー行為等に係る被害の防止に資する物品の教示または貸し出し
⑦ 申し出に係るストーカー行為等について警告、禁止命令等または仮の命令を実施したことを明らかにする書面を交付すること等
警察本部長は、ストーカー行為等に係る被害を防止するための措置を講ずる義務がありますので、被害者は自宅周辺のパトロールの実施の要請をすることも要請すると良いです。
3 DV防止法による保護命令の対応策
DV防止法の保護命令には要件があります。
① DV防止法の「配偶者」の関係にあること。
法律婚の夫婦だけではなく、事実婚の夫婦も含みます。平成25年の法改正により生活の本拠を共にする交際関係にある場合(同棲関係)も対象となりました。
② DV加害者と①の関係にある期間に暴力や脅迫を受けたこと。
DV加害者による暴力を受けた後で離婚した場合でも、以前に受けた暴力や脅迫を理由に保護命令の申立は可能ですが、離婚後に受けた暴力や脅迫を理由とすることはできません。
③ 身体に対する暴力によって、生命または身体に重大な危害を加えられるおそれがあること。
これが実務上問題になることが多く、既に危険が止んだと判断される場合には保護命令は発令されません。例えば、「既に遠方に引越しした」等の場合には保護命令は難しいです。
保護命令には以下の5つの種類があります。
① 接近禁止命令
被害者の身辺につきまとう、自宅や勤務先周辺を徘徊することが禁止されます。期間は発令から「6か月間」です。
② 退去命令
DV加害者を被害者の自宅から退去させる命令です。期間は「2か月間」です。2ヵ月経過するとDV加害者が戻る可能性があるので、その間に引越しすることが通例です。
③ 電話等禁止命令
接近禁止命令を発する際、被害者の申立により「6か月間」以下の行為を禁止できます。
・面会の要求
・行動を監視していると思わせるような事項を告げること
・著しく粗野または乱暴な行動をすること
・無言電話を掛けること、または緊急の場合を除き、連続して電話をかけ、ファックスや電子メールを送信すること
・緊急の場合を除き、午後10時から午前6時までの間に、電話をかけ、ファックスや電子メールを送信すること
・汚物・動物の死体その他著しく不快又は嫌悪の情を催させるようなものを送付等すること
・名誉を害する事項を告げる等すること
・性的羞恥心を害する事項を告げ、または性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付等すること
④ 被害者の未成年の子への接近禁止命令
接近禁止命令を発する際、被害者の申立により「6か月間」被害者と同居する未成年の子の住居、就学する学校等において、その子の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊することを禁止できます。
⑤ 被害者の親族等への接近禁止命令
接近禁止命令を発する際、被害者の申立により「6か月間」被害者の親族の住居等において、その親族の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊することを禁止できます。
4 民事保全法に基づく仮処分命令の対応策
DV被害者が現在の危険を取り除くため、民事保全法に基づき、DV加害者に対して、面談禁忌、架電禁止などの仮処分の申立をして、裁判所に仮処分命令を発令してもらう方法です。
保護命令のような厳格な要件や期間制限がないのが特徴です。担当裁判官の裁量的な判断によって弾力的な運用の可能性があります。
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木下 敏秀