物損の交通事故の交渉において注意すべきポイントについて解説をします
この記事を書いたのは:木下 敏秀
1 人身事故と物損事故での法律上の取扱が違います
人身事故と物損事故では法律上の取扱が違うポイントがあります。大きな点はとしては2点であり、
①自動車損害賠償保障法3条本文の「運行供用者責任」の適用は人身事故のみ適用があり、物損事故には適用がありません。
②また、物損事故の時効期間は「3年」ですが、民法改正(民法724条の2)により人身事故の時効期間は「5年」になりました。
運行供用者責任を簡単に説明しますと、実際に自動車を運転していた者だけではなく、自動車の運転と走行を管理できる立場にある者にも交通事故の責任を認めることです。
例えば、従業員が勤務先の会社の自動車を無断使用して交通事故を起こした場合、知人に一時的に自動車を貸与した場合にも会社に責任が認められるケースがある等です。
2 原則的に全塗装を請求することはできません
過去の裁判例では、自動車の塗装が必要な場合には原則的には部分塗装の範囲で塗装費用の損害賠償が認められるのが通例です。
ただし、例外的に全塗装の塗装費用を認めた裁判例もあります。その裁判例としては2つの裁判例を説明します。
【東京地裁平成元年7月11日判決】
交通事故の被害により自動車のバッテリーが損傷し、バッテリー液が広範囲に飛散したという特殊事情があった事案です。バッテリー液は希硫酸であるため車体の腐食の原因になりますのでこの事情が考慮されたと思います。
【神戸地裁平成13年3月21日判決】
交通事故の被害車両が特殊塗装を施した車両(ベンツ)であり、部分塗装では色合わせが困難(他の部分との相違が明白)という特殊事情があった事案です。
3 物損事故における評価損の判断は非常に難しいです
物損事故において車両を修理しても中古車市場における取引価格の低下があります。この取引価格の低下が評価損です。
過去の裁判例では、修理費用の一定割合を評価損として認める事例がありますが、その判断は非常に難しく簡単ではありません。
評価損が認められにくい一応の目安について説明します。
【初年度登録からの期間】
外国車・国産人気車種 5年以上
国産車 3年以上
【走行距離】
外国車・国産人気車種 6万km以上
国産車 4万km以上
【損傷の部位】
一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)が示す修理歴判断基準を満たさない
【車種】
国産大衆車・原動機付自転車
評価損の立証資料として一般財団法人日本自動車査定協会作成の「事故減価額証明書」を提出する場合もありますが、過去の裁判例では、評価損の発生自体を認めない事例、評価損を認めても金額を減額した事例等があります。この立証資料が有効であるか否かはケースバイケースとなります。
4 代車料の請求にも色々な要件やポイントがあります。
物損の交通事故で代車料(レンタカー代)を請求する場合には
①代車を使用したこと
②代車料を支出したこと
③代車を使用する必要性があること
④代車の車種が相当であること
⑤代車を使用した期間が修理・買替等に要する相当な期間であること
が要件となります。
代車の必要性については、営業車の場合には原則的には認められるのが通例ですが、自家用車の場合には、日常生活に不可欠なのか・代替交通期間の使用の可能性の有無等が検討されることになります。
代車の使用期間の一般的な目安としては、修理事案については概ね2週間程度、買替事案については概ね1カ月程度といわれています。
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木下 敏秀