夏はどの履物よりもサンダルが涼しく快適ですが、サンダル運転は違反なの?
この記事を書いたのは:高橋 寛
1 今年2022年の夏は異常な猛暑でした。特に愛知県・岐阜県・三重県の 東海地方では、連日の猛暑日で、熱中症対策に追われる日々が続きましたね。こまめな水分補給はもとより、夜間でもエアコンの使用を勧める報道がテレビなどを通じて広報され、これが常態化していました。
春日井市に住んで名古屋市の会社に通勤しているAさんは、休日には愛車を運転して買い物や、家族サービスで近場の温浴施設に行きます。猛暑日続きの今年は、少しでも涼しい過ごし方をと思い、サンダル履きで運転していました。
9月中旬のある日、会社の昼休みに同僚と食後の雑談で、休日の過ごし方を話しているとき、同僚から「サンダル履きで運転するのは違反じゃないかな。」と言われました。Aさんは、サンダルは涼しいし、今までサンダルで運転していても違反の取り締まりを受けたこともありませんが、同僚の言うとおりであれば今後気を付けなくてはならないので、本当のところを教えて欲しいと思っています。
今回は、車を運転する場合の履物について、違反になる場合と、違反にならない場合を説明します。
2 道路交通法では運転するときの履物について、どのように定めているのでしょうか。
はっきり言って、道路交通法には運転するときの履物を定めている条文がありません。しかし、運転者が守らなければならない事項を定めている第71条では、その6号に「道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」と規定されています。
すなわち、各都道府県の公安委員会が定めている道路交通法施行細則に目を通し、その細則に運転するとき履いてはダメな履物が定めてあれば、その細則を守らずに運転すると、道路交通法違反になります。
3 愛知県の細則は運転するときの履物について、どのように定めているのでしょうか。
Aさんが住んでいる春日井市は愛知県にありますから、車を運転するとき履いてはダメな履物について愛知県の細則がどうなっているかを見ましょう。愛知県の細則には「運転の妨げとなるような衣服又は履物を着用して車両等を運転しないこと」(細則7条3号)と定めてあります。これだけ見ると、サンダル運転がダメだとは書いてありません。
Aさんは休暇を利用して、春日井市から愛知県外に旅行する場合もあるので、参考までに他の都道府県がどのような細則になっているかを見てみましょう。
北海道は「けた、スリッパ等運転操作に支障を及ぼすおそれのある履物をはいて運転しないこと」
東京都は「木製サンダル、げた等運転操作に支障を及ぼすおそれのある履物をはいて運転しないこと」
大阪府は「げた又は運転を誤るおそれのあるスリッパ等を履いて運転しないこと」
などと定めてあります。
上記に紹介した他の都道府県細則には、げた とか スリッパ、木製サンダルなど、運転のとき履いてはダメな履物の種類が例示してあります。愛知県の細則を含めて、これらの細則に共通しているキーワードは「運転に支障を及ぼすおそれのある履物」がダメということになります。
4 ダメな履物で運転すると、安全運転にどのような支障があるのでしょうか。
例えば、スリッパを履いて運転する状態を想像してください。足に固定されていないので、アクセルペダルの上に軽く足を乗せて運転していた際、事故を避けるため急ブレーキを踏む必要が発生した場合、わずかなはずみでスリッパが脱げるおそれがあります。そうすると適切なブレーキ操作ができず、交通事故を招いてしまいます。
また、脱げたスリッパがブレーキペタルの下に挟まることもあります。スリッパが挟まっていると信号待ちの先行車に続いて停止するとき、ブレーキの効きが甘くなり、本来の制動距離内に停止できず、追突事故になるおそれがあります。
足に固定されていても、かかとの高いハイヒールを履いての運転はどうでしょうか。かかとの先が極めて細く、かかとの先から足までの高さもあるため、ペタル操作の際に滑りやすく、ハイヒールでの運転は、安全な交通に支障を及ぼすおそれのありますから、ハイヒールはダメです。
5 サンダルでの運転はダメなのでしょうか。
サンダルと言っても、足のかかとまで覆うスタイルのものから、鼻緒が付いているもの、鼻緒が無く5本指全体を包むアーチ型のベルトがあるだけの「つっかけ」と俗称されるものまで、色々な種類があります。その形によって安全運転に支障がないものと、支障があるものとに分かれます。
かかとまで覆うスタイルのサンダルは、かかとのストッパーをきちんと止めて履いていれば足に定着しているので、運転のとき履いてもO・Kです。
また、鼻緒の付いたサンダル例えばビーチサンダルも、足指の間に鼻緒を挟んで履きますから、足への定着性があり、脱げにくいので安全運転に支障は出にくいものとされています。
サンダルの仲間でも、鼻緒の無い「つっかけ」と俗称されているものはスリッパと同じ形状ですから、足に定着していないため脱げやすく、安全運転に支障がある履物です。
安全運転に支障があるサンダルかどうかは、逃げるドロボーを捕まえるつもりでで、そのサンダルをはいて10mほど走ってみれば、運転操作に支障の履物かどうかの区別がつきますから、試してみて体で覚えておくのもいいかと思います。
6 裸足での運転は違反にはなりませんが、避けた方が賢明です。
法令には、はだしで運転することを禁止する定めはありません。そのため裸足で運転しても違反にはなりません。ただし、脱いだ履物を運転席の足元に置いたまま、裸足になって運転するのは大変危険です。脱いだ履物がアクセルやブレーキペタルの下に挟まったり、絡みついたりして、安全運転の妨げになります。
どうしても裸足での運転を試してみたい場合は、脱いだ履物は鞄などに入れて後部座席に置いておくなど、運転中に履物が座席の下をゴロゴロ移動しない措置を講じておく必要があります。
そうは言っても、裸足で運転中に万一もらい事故に遭ったりすると、足を保護する物がないため、思わぬ大ケガをするおそれがあります。
違反にならなければ何をしても良いという訳には参りませんから、裸足での運転は止めておくのが賢明です。
ちなみに、実験の結果によると、車の運転に最も適する履物はスニーカ―だそうです。
7 万一交通事故に遇われた場合は、経験豊かな弁護士が揃っている旭合同法律事務所にお声掛けください。
春日井市には旭合同法律事務所の春日井事務所があります。春日井事務所へは、国道19号線沿いにある次の写真の三原ビルを目指してお越しください。
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高橋 寛