同一労働同一賃金の考え方の具体例について厚生労働省ガイドラインに沿って解説をします(第1回)
この記事を書いたのは:木下 敏秀
1 同一労働同一賃金の基本的な理解について
パートタイム・有期雇用労働法は、同一の事業主に雇用される「通常の労働者」と「短時間・有期雇用労働者」との間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに不合理な待遇差を設けることを禁止しています。その中心となる考え方が「均等待遇」と「均衡待遇」です。
【均等待遇】
短時間・有期雇用者と通常の労働者との間で
①職務の内容
②職務の内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取扱を禁止すること
【均衡待遇】
短時間・有期雇用者と通常の労働者との間で
①職務の内容
②職務の内容・配置の変更の範囲
③その他の事情を考慮して不合理な待遇差を禁止すること
2 基本給についての具体的な違いの解説について
基本給の待遇差について具体的に何が問題とならず、何が問題となるかを厚生労働省のガイドラインに沿って説明をします。
⑴ 基本給であって、労働者の能力又は経験に応じて支給する場合
【問題とならない例】
基本給について労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、ある能力の向上のための特殊なキャリアコースを設定している。通常の労働者であるXは、このキャリアコースを選択し、その結果としてその能力を習得した。短期間労働者であるYはその能力を習得していない。A社はその能力に応じた基本給をXには支給し、Yには支給していない。
【問題となる例】
基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXが有期雇用労働者であるYに比べて多くの経験を有することを理由としてXに対しYよりも基本給を高く支給しているが、実際にはXのこれまでの経験はXの現在の業務に関連性を持たない。
⑵ 基本給であって、労働者の業績又は成果に応じて支給する場合
【問題とならない例】
基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、所定労働時間が通常の労働者の半分の短時間労働者であるXに対し、その販売実績が通常の労働者に設定されている販売目標の半分の数値に達した場合には、通常の労働者が販売目標を達成した場合の半分を支給している。
【問題となる例】
基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、通常の労働者が販売目標を達成した場合に行っている支給を、短時間労働者であるXについて通常の労働者と同一の販売目標を設定し、それを達成しない場合には行っていない。
⑶ 基本給であって、労働者の勤続年数に応じて支給する場合
【問題とならない例】
基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価した上で支給している。
【問題となる例】
基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価せず、その時点の労働契約の期間のみにより勤続年数を評価した上で支給している。
3 賞与についての具体的な違いの解説について
【問題とならない例】
A社においては、通常の労働者であるXは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、当該目標値を達成していない場合、待遇上の不利益を課されている。
その一方で、通常の労働者であるYや、有期雇用労働者であるZは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っておらず、当該目標値を達成していない場合にも、待遇上の不利益を課されていない。
A社は、Xに対しては、賞与を支給しているが、YやZに対しては、待遇上の不利益を課していないこととの見合いの範囲内で、賞与を支給していない。
【問題となる例】
賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社においては、通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇 用労働者には支給していない。
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木下 敏秀