養育費の変更(事情変更)についての家庭裁判所の考え方を教えます
この記事を書いたのは:木下 敏秀
1 養育費については離婚後の事情によって変更となり得ます
離婚時に夫婦の間で決定した養育費は離婚後の事情によって変更となることがあります。民法766条3項では「家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる」と規定しています。
2 どのような事情が養育費の変更事情となるでしょうか
過去の家庭裁判所における事情変更の事情の具体的としては以下のような具体的があります。
① 離婚後の再婚や連れ子との養子縁組
② 収入の変動
③ 物価の変動
④ 需要の増加(学費等)
3 再婚の事情等の場合でも変更とならないこともあります
離婚後の再婚や連れ子との養子縁組という事情が発生した場合、事情変更の事情として養育費が減額となることがあります。
ただし、当事者の収入を考慮して否定した裁判例もあります。参考となる家庭裁判所及びその抗告審である高等裁判所の裁判例を紹介します。
【熊本家審平成26年1月24日】
過去の家庭裁判所の裁判例では、養育費(子供2人、1人当たり月額20万円)の支払義務者が医師であって収入が高額である場合には、医師側に再婚や連れ子との養子縁組という事情変更の事情があっても、医師が努力をすれば支払が可能であるとして、医師の養育費減額請求を却下した例があります。
【福岡高決平成26年6月30日】
しかし、この熊本家裁の判断は抗告審である福岡高裁にて、医師側に新たな子が出生している等のそれぞれの生活状況に大きく変更があるとして、子供1人当たりの養育費を月額20万円から月額17万円に変更しています。
このように養育費の事情変更による減額の判断は画一的に判断することが出来ず、当事者間の様々な事情を考慮する必要があることが分かります。
4 事情変更の主張が予見可能であったして否定されることがあります
当事者の収入減少等の事情が予見可能であることが問題になる事例もあります。参考となる家庭裁判所及びその抗告審である高等裁判所の裁判例を紹介します。
【東京家八王子支審平成19年7月19日】
離婚時に調停で養育費を決定した後にトラックのリース代金の負担が発生して収入が大幅に減少したことを根拠に養育費の減額を求め、家庭裁判所は予想できた減収の範囲を超えているとして養育費の減額を認めています。
【東京高決平成19年11月9日】
しかし、この東京家裁八王子支部の判断は抗告審である東京高裁にて、調停の当時、当事者に予測不能であったことが後に生じた場合に限り、これを事情の変更と評価して調停の内容を変更することが認められるものと判断した上で、当事者の収入の減少は予測可能であって養育費を減額すべき事情の変更とはいえないとしました。
このように同じ事情であっても裁判官の評価によって事情変更の判断が異なることがありえます。
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木下 敏秀