相続問題

相続に強い弁護士による遺産相続の解決事例①

この記事を書いたのは:田中 伸明

「親の介護をしたのは自分」との理由で、法定相続分を大幅に超える遺産の取得を主張していた相続人との間で、法定相続分による遺産分割協議を成立させることができました

(ご相談内容)

相続人との間で遺産分割協議がまとまらないとのお悩みの相談です。亡お母様(以下、被相続人と言います)の相続で、相続人はご相談者様とお兄様(以下、相手方と言います)のお二人。被相続人の生前は、相手方夫婦が同居して被相続人の介護をしてくれていました。被相続人が遺言書を作成していなかったため、相続人間で遺産分割協議を行うことになりましたが、相手方は自分たち夫婦が被相続人の介護をしたから、自分たちがその分多くの遺産を取得する権利があると主張され、法定相続分での遺産分割を希望するご相談者様との協議がまとまらない状況でした。そこで、ご相談者様からウェブサイトを通じてご依頼いただき、相手方との交渉を行うことになりました。

(解決内容)

当職から相手方に法定相続分での遺産分割協議に応じるように説得する手紙を出し、お電話でも交渉しましたが、どうしても法定相続分での遺産分割には応じていただけませんでした。
そこで、当職から、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。相手方は、調停の場でも従来の主張を繰り返していましたが、裁判所(調停委員)を通じて、「看護をしただけでは、法的には法定相続分を超える遺産を取得する理由にはならない」ことを丁寧に説明し、調停が不成立になれば審判に移行すること、審判手続きでは相手方の主張が認められる可能性が低いことを説明させていただきました。また、被相続人の預金口座の履歴を調べたところ、数百万円単位の出金が確認できました。高齢の被相続人が出金したとは考えられませんでしたので相手方に問い質したのですが、相手方からは明確な回答はありませんでした。そこで、このまま遺産分割が成立しないと別途、不当利得返還請求の裁判を起こす可能性があることを説明しました。その結果、ご相談者様が被相続人名義の預金口座からの出金を不問にすることを条件に、相手方も法定相続分での遺産分割に応じることに同意し、調停を成立させることができました。

(弁護士からのコメント)

親の看護をしたからとの理由で、法定相続分を超える遺産の取得を主張することを寄与分と言います。しかしながら、子供が親の看護をすることは扶養義務の範囲内であるため、看護をしたというだけでは寄与分は認められないのが裁判実務です。また、今回は預金口座からの不自然な出金を確認することができましのたでそれを交渉材料とすることができました。遺産全体からすると不正出金の額は少なかったですし、ご相談者様には別途不当利得返還請求の裁判を起こすまでのお気持ちもなかったことから、それを不問にすることでの遺産分割協議の成立に承諾していただくことができました。


この記事を書いたのは:
田中 伸明