相続に必要な手続きと押さえておくべきポイントをご紹介します
この記事を書いたのは:田中 伸明
1 遺言書の調査
2 相続人の調査
3 相続財産の調査
4 生前贈与、使途不明金の調査
5 遺産分割協議
6 相続放棄の検討
7 遺留分侵害額の請求
【1】遺言書の調査
1 遺言書の調査
故人が遺言書を作成した可能性があるけど、自宅に見当たらないという場合は、公正証書遺言は公証役場、自筆遺言は法務局に保管されていないかを調査する必要があります。
2 遺言書があるときの手続き
遺言書の内容のとおり相続手続きを行っていくことになります。
遺言書の中で遺言執行者が決まっている場合は、その遺言執行者が遺言に沿って相続手続きを行っていきます。
但し、相続人全員の同意があれば遺言と異なる遺産分割を行うことができます(遺言執行者、相続人以外の受遺者が指定されている場合はその同意も必要です)。
3 遺言書が無いときの手続き
遺産をどのように分けるかについて相続人全員で協議をする必要があります。
その場合の各相続人の取得分は法定相続分が基準となります。
【2】 相続人の調査
被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本などを集める必要があります。
孫、ひ孫の世代まで相続している場合は、相続人の人数が多くなり、戸籍謄本の取り寄せに数か月を要することもあります
【3】相続財産の調査
1 不動産の評価額が重要です
不動産の評価額には、固定資産税を計算するための「固定資産評価額」、相続税を計算するための「路線価」、売買する場合の「時価」があります。一般的には、固定資産評価額<路線価額<時価額という関係になります。
不動産の評価額は、相続税の申告、遺産分割、遺留分の計算などにおいて大きく影響してきますので適正な評価が重要となります。
2 債務の調査も忘れずに
クレジットカードや利用明細書などがある場合は、債務が残っていないかをカード会社などに確認する必要があります。
故人が借家住まいであったときは、原状回復費用がどれくらいになるかの確認も必要です。
【4】生前贈与(特別受益)または使途不明金の調査
1 銀行口座の調査
相続人への生前贈与や個人の通帳を管理していた相続人が故人に無断で預金を引き出していた可能性がある場合は、銀行から故人名義口座の取引履歴を取り寄せて、生前贈与がなかったか、不自然な出金がないかを調査する必要があります。
2 生前贈与があった場合
故人が亡くなるまでの10年間に贈与があった場合は、その金額を相続財産に加算して各相続人の取得分を計算することになります。これを特別受益といいます。
また、亡くなる3年分の贈与は相続税の計算においても遺産に加算して計算されることになります。
3 使途不明金があった場合
使途不明金があった場合は、使い込んだ相続人に対し返還するよう請求することができます。これを不当利得返還請求といいます。
但し、引き出しから10年が経過したものは時効で請求できない可能性があります。
【5】遺産分割協議
1 遺産分割協議書
遺言書が無い場合、相続人の間で遺産をどのように分けるかを話し合う必要があります。話し合いが成立すると遺産分割協議書という文書を作成します。この文書は不動産の登記手続きや預貯金の解約手続きなどに必要な重要なものです。
2 分割方法
遺産の分割には様々なパターンがありますが、例えば、遺産が自宅しかなく、故人と同居していた長男が継ぐというケースでは、長男が自宅を取得する代わりに、他の相続人に対して自宅の価値分をお金で支払うという方法があります。これを代償分割といいます。
分割方法は相続税額に影響してくることもありますので注意が必要です・
3 相続分譲渡
遺産はいらないとう相続人は、単に遺産を取得しないという方法もありますし、特定の相続人に自分の相続分を譲渡することもできます。これを相続分譲渡といいます。
相続人間での相続分の譲渡には贈与税はかかりません。
【6】相続放棄の検討
1 相続放棄
相続財産の調査を行った結果、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多かったときには相続をしないことができます。これを相続放棄といいます。
相続放棄をする場合は、基本的には相続開始(故人の死亡日)から3か月以内に、家庭裁判所で相続放棄の手続きをしなければなりません。
但し、財産調査や債務の調査などに時間を要する場合には期間の延長を裁判所に申し立てることができます。
相続開始後3か月以上が経過している場合でも相続放棄が出来る場合がありますので弁護士に相談されることをお勧めします。
2 管理責任が残ることがあります
財産価値のない不動産がある場合に相続放棄をすることがありますが、相続放棄後も、他の管理者(他の相続人が相続を承認した場合、相続財産管理人が選任された場合など)が決まるまでの間は管理責任を負うことに注意が必要です。
例えば、家の壁などが崩れて隣の家屋に損害を与えた場合などには損害賠償責任が発生することがあります。
【7】遺留分侵害額の請求
遺留分とは、簡単に言いますと、相続人に最低限保証された相続取得分のことです。
例えば、父親が1600万円の財産を遺して亡くなり、その相続人妻、長男、二男の3人のうち、遺言書によって長男が全ての財産を取得したというケースでは、妻の遺留分400万円(4分の1)、二男の遺留分200万円(8分の1)を侵害していることになり、妻と二男は長男に対して侵害された遺留分を請求することができます。
遺留分は、遺留分が侵害されていることを知ってから(一般的には遺言書の内容を知ったときから)1年以内に行使しないと請求できなくなるので注意が必要です。
8 相続のことは旭合同法律事務所にご相談ください
旭合同法律事務所は相続に関するご依頼を経験豊かな弁護士が担当しております。
相続の問題も事案に則したケースバイケースの分析が大変重要になります。
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田中 伸明