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特別養子縁組の制度が利用しやすくなりました。

この記事を書いたのは:高橋 寛

1 改正された特別養子縁組について説明します。

 特別養子縁組は、さまざまな理由で生みの親と暮らすことができない子どもに新たな養親子関係を築いて、子どもが愛情に包まれて育つために創られた公的な制度です。

 特別養子縁組は、家庭裁判所の審判によって成立します。縁組が成立すると、生みの親との親子関係はなくなり、養親との間に唯一で強固な親子関係が築かれるのが特徴です。

2 養子となる子どもの実父母の同意が必要です。

 特別養子縁組は、生みの親(実父母)による養育が著しく困難であるとか、不適当であるなどの事情があって、子どもの福祉のため特に養子縁組が必要であると、家庭裁判所に認められなければいけませんが、生みの親との親子関係がなくなる制度でもあります。

 そのため、原則として生みの親の同意が必要です。ただし、生みの親が同意の意思を表示できない場合、または生みの親による虐待、養育放棄など悪意の遺棄その他子どもの利益を著しく害する事由がある場合は、生みの親の同意が不要になることがあります。

3 養親となるには、25歳以上の夫婦であることが必要です。

 特別養子縁組で養親になる人は、夫婦が共同で縁組をすることになります。そのため、配偶者のいない人は特別養子縁組の養親になることができません。

 また、養親となる人は25歳以上でなければなりません。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳以上であれば、もう一方が20歳以上になっていれば、夫婦そろって養親になることができます。

4 養子となる子どもの年齢は15歳未満である必要があります。

 特別養子縁組で養子となる子どもの年齢が、以前は6歳未満となっていましたが、令和2年4月1日からは原則として15歳未満に引き上げられました。

 ただし、子どもが15歳になる前から養親になる人に監護されていた場合は、その子が18歳に達する前までは、家庭裁判所に審判を申し立てることができます。

 養子となる子どもの年齢は、家庭裁判所に審判を申し立てるときが基準日になります。

5 縁組成立のためには、養親となる人が養子となる人を6か月以上監護していることが必要です。

 家庭裁判所に審判を申立てると、6か月以上の試験養育期間が決められます。養親となる人は養子となる子どもと試験養育期間を一緒に暮らし、支障なく親子関係を築くことができるかどうかを試すことになります。

 家庭裁判所は、その間の監護状況を考慮して特別養子縁組の成立を決定します。

6 今回の改正で、特別養子縁組の審判が2段階に分けられました。

 特別養子縁組を成立させるには、(1)特別養子適格の確認の申立てと、(2)特別養子縁組の成立の申立てが必要です。養親となる人が特別養子適格の確認の申立てをする場合は、特別養子縁組の成立の申立てと同時にする必要があります。

 令和2年の改正で、審判が2段階に分けられました。

第1段階:適格性確認⇒実親による養育状況と、実親の同意の有無などを判断。

第2段階:縁組成立⇒養親子のマッチングを判断する審判。

実親は、第1段階の手続きで縁組に同意して2週間経過した後は、同意を撤回できなくなります。試験養育は、第1段階の審判が出た後に行うことになります。

2つの段階を並行して審判することが可能になり、手続きの長期化を防ぐメリットがあります。

今回の改正前は、特別養子縁組の申立ては養親側が行うことが必要でした。しかし改正後は、児童相談所長が第1段階の申立てを行ったり、審判に参加して実親の養育状況を立証したりできるようになり、養親になろうとする人の負担が軽減されました。

7 特別養子縁組、普通養子縁組、里親制度の違いは次のとおりです。

(1) 特別養子縁組:戸籍上の記載⇒ 長男、長女

         養親との離縁⇒ 原則として認められない。

         子供の年齢 ⇒ 原則として15歳未満

         成   立 ⇒ 家庭裁判所の審判

         養育費の受給⇒ なし

(2) 普通養子縁組:戸籍上の記載⇒ 養子、養女

         養親との離縁⇒ 認められる。

         子供の年齢 ⇒ 制限はない。

         成   立 ⇒ 養親と子どもの親権者との契約

         養育費の受給⇒ なし

(3) 里    親:戸籍上の記載⇒ 戸籍に無関係

         養親との離縁⇒ 戸籍に無関係

         子どもの年齢⇒ 18歳未満

         成    立⇒ 児童相談所から委託を受ける。

         養育費の受給⇒ 国と地方自治体から所定の養育費と里親手  

                 当てを受給する。

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この記事を書いたのは:
高橋 寛