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国民健康保険の届出が必要なのは、どのような場合でしょうか。

この記事を書いたのは:高橋 寛

 春日井市に住んでいるAさんは、名古屋の会社に勤務していましたが、このたび退職しました。会社に勤務していたときの健康保険証を返還することになったため、新しく国民健康保険証を交付してもらうには、どこで、どのような手続きをすればいいのでしょうか?

今回は、国民健康保険国保の届出が必要な場合と、届出が遅れたときの不都合について解説いたします。

1 国民健康保険(国保)は、みなさんが病気になったり怪我をしたとき、医療費などの経済的負担を軽くし、安心して医療機関を利用できることを目的とした制度です。

(1) 国保は、市区町村ごとに運営されていましたが、平成30年に改正され、安定的な運営を可能にする目的で、都道府県が運営方針を策定し、身近なきめ細かい運営は、従来どおり市区町村が運営するようになりました。

(2) 都道府県は、市区町村ごとの国民健康保費納付金を決定し、給付に必要な費用の全額を市区町村へ支払います。

  これに対し、市区町村は、加入者の資格管理、各種届出の受付、保険証(被保険者証)の発行、保険料率の決定・徴収、国保事業納付金を都道府県に納付することなどを行います。

(3) 勤務先の医療保険(例えば健康保険=国保、共済組合、船員組合など)に加入している人及びその被扶養者、生活保護を受けている人、外国籍で在留資格が1年未満の人、又は75歳(一定の障がい者は65歳)以上で後期高齢者医療保険に加入している人以外は、すべての人が自分の住んでいる市区町村の国民健康保険組合に加入する必要があります。

(4) 国保の加入者は、世帯主やその家族を問わず、一人ひとりが被保険者です。しかし、加入は世帯ごとになるので、届出や国保税の納付は、世帯主が行うことになっています。

2 国民健康保険に加入する届出が必要なのは、次のような場合です。異動の日から14日以内に、遅れないで届け出ましょう。

(1) ほかの市区町村から転入したとき。

 国保のきめ細かい運営は、市区町村が行っていますから、例えば瀬戸市から引っ越して春日井市に転入したときは、春日井市の健康保険組合に加入する届出が必要です。

 届出をする場所は、春日井市の場合であれば、春日井市役所の保険医療年金課、味美または高蔵寺のふれあいセンター、坂下または東部市民センターで手続きすることができます。

(2) 職場の健康保険(健保)をやめた(脱退した)とき。

 先ほどのAさんは、職場の健保をやめた場合に当たりますから、春日井市の国保に加入する届出をしなけれななりません。

 届出の手続きをする場所は、(1)の転入した場合と同じです。以下の場合も届出をする場所は同様です。

(3) 職場の健保の被扶養者から外れたとき。

 会社に勤務しているBさんの長男Cさんは、小牧市でBさんと暮らしBさんに扶養されている間は、Bさんが職場で加入している健保の被扶養者ですから、病気になってもBさんの健康保険証で医療給付を受けることができます。

 その後Cさんは成長して、小牧市内で独立し一人親方の大工になり、Bさんの扶養を受けなくても暮らせるようになりました。このような場合、CさんはBさんの扶養家族ではなくなりましたから、小牧市の国保に加入する届出をしなくてはいけません。

(4) 子どもが生まれたとき。

 生まれたばかりの子どもも、必ず健康保険に加入しなければいけません。生まれた子どもを扶養する人が職場の健保に加入している場合は、職場の健保に被扶養者としての加入届をすることになります。

 生まれた子どもを扶養する人(通常は親)が国保の保険証を持っている場合は、生まれた子どもを国保の被扶養者として加入させる届出をする必要があります。この届出は世帯主が行います。

(5) 生活保護を受けなくなったとき。

 国保は、基本的には全ての国民が加入する義務のある医療保険制度です。そして、国保に加入すると保険料(国保税)を負担する必要があります。

  ところが、生活保護を受けている人は、この保険料を負担する必要がなく、したがって国保に加入することができません。そのため、生活保護受給者になると、国保から脱退します。生活保護は世帯単位で受給しますから、その世帯構成員全員が国保から外れます。

 逆に、生活保護を受けなくなったときは、再び国保に加入することになりますから、住んでいる市区町村の国保に加入する届出を行う必要があります。

(6) 前記(1)から(5)までの届出が遅れると、病気になっても医療給付を受けることができない場合があります。そのため、必要な届出は、異動の日から14日以内に行いましょう。

3 国民健康保険をやめる届出が必要なのは、次のような場合です。異動の日から14日以内に、遅れないで届け出ましょう。

 (1) ほかの市区町村へ転出するとき。

 例えば、春日井市から引っ越して尾張旭市へ転出するときは、春日井市の国保をやめる(脱退する)届出を行う必要があります。

 国保のきめ細かい運営は市区町村が行っていますから、ほかの市区町村へ転出すると、転出先の市区町村の国保へと移ることになります。

(2) 職場の健保に加入したとき。

 新しく就職した職場の健保に加入すると、国保への加入義務が消えます。そのため、これまで加入していた国保を辞める(脱退する)届出をしておく必要があります。

(3) 職場の健保の被扶養者になったとき。

 日進市に住んでいるFさんは、両親ともども国保に加入していました。ところが父親のEさんが通信教育で大学を卒業し、教員免許を取得できて小学校の教員になりました。

 そのため、Fさんは、父Eさんが勤務する学校の健康保険(教職員共済組合)の被扶養者になりました。

 このような場合、Fさんは国保への加入義務がなくなりますから、日進市の国保をやめる(脱退する)届出をしておく必要があります。

(4) 国保の被保険者が死亡したとき。

 職場の健保の加入者及びその被扶養者以外の人は、基本的にすべての人が国保に加入しています。この状態を被保険者と言います。

 被保険者が死亡すると、加入者ではなくなりますから、世帯主は、死亡した人が国保をやめる(脱退する)届出をする必要があります。

(5) 生活保護を受けるようになったとき。

 生活保護を受けるようになると、国保の保険料を負担する必要がなくなるとともに、国保から外れます。そのため、生活保護を受けるようになったときは、14日以内に、国保をやめる(脱退する)届出を行わなければいけません。

 生活保護を受けるようになると国保からは外れますが、医療費などは生活保護費で支給されますから、心配はありません。

(6) 前記(1)から(5)までの届出が遅れると、納めなくてもいい保険税を納めていたりすること場合があります。異動の日から14日以内に、遅れないで届出を行いましょう。

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この記事を書いたのは:
高橋 寛