刑事事件

「桜を見る会」前日の夕食会事件で略式命令

◎ 既に報道されているように、首相が、各界で功績や功労のあった人を慰労する目的で新宿御苑に招待し、公費で花見をする「桜を見る会」は、1952年に始まりました。そして、安倍前首相の政治団体「安倍晋三後援会」は、2013年以降2019年まで毎年、「桜を見る会」の前日、都内の高級ホテルに地元の支援者らを招いて食事会を開いてきました。

◎ この夕食会は1人5000円の会費でしたが、この会費だけでは不足するので安倍前首相の政治団体が不足分を補填してホテルに支払っていました。



◎ 政治団体は毎年の収支を報告する義務がありますが、全国の弁護士有志らの告発を受けた東京地検特捜部による捜査の結果、「安倍晋三後援会」は収支報告書に、「桜を見る会」前日の夕食会関係の会費収入と、補填分を含む支出を記載していないことが明らかになりました。

公設秘書に罰金100万円の略式命令

(1)2020年12月24日、安倍氏の政治団体「安倍晋三後援会」代表の公設第一秘書は、政治資金規正法違反(収支不記載)の罪で略式起訴され、即日、東京簡裁から罰金100万円の略式命令が出されました。

(2) 略式裁判になった事件の内容は、2016年から2919年の4年間、夕食会の会費収入と、補填分707万円を含む3022万円の支出を、後援会の収支報告書に記載しなかった、というものです。

(3) この事件の内容や背景などについては長くなるので報道に譲ることとし、本稿では、略式裁判について、どのような制度なのか、どのように運用されているかを見ることとします。

ポイント① 略式裁判は被疑者の同意がある場合に限られる。

(1) 略式裁判は、検察官の請求によって、簡易裁判所が公判手続きによらず、書面審理で、被告人に対し100万円以下の罰金または1万円未満の科料を課す裁判のことで、略式手続とも呼ばれています。被疑者が犯罪事実を認めている場合で、犯罪の成立が明らかであって、あとは、罰金または科料の額を決めるだけの事件については、法廷を開いて証拠調べを行い判決を言い渡す通常の裁判手続きを省略し、書面審理によって迅速に決めることができるため、交通違反をはじめ比較的軽微な刑事事件では多用されています。

(2) 憲法37条は、刑事事件について公開裁判がすべての被告人の権利であることを定めています。そのため、検察官が略式手続きによる起訴をするには、予め被疑者に対し、略式裁判の制度を分かりやすく説明した上、被疑者が略式裁判を受けることに異議がない(同意する)ことを明確にした場合のみ、簡易裁判所に略式裁判を請求(略式起訴)をすることができます。検察の実務では、被疑者に異議がないことを明確にするための書類を示し、被疑者の署名・押印(または署名・指印)を得た上、その書類を起訴状に添付して略式起訴します。

ポイント② 略式手続は書面審理のみで裁判されます。

(1)  検察官は、略式起訴するとき、事件記録も起訴状と一緒に簡裁へ提出します。これを受けた裁判所の担当裁判官は、法廷ではなく執務室で事件記録を精査し、裁判内容を決めます。被告人が裁判所へ出頭する必要はありません。裁判内容が決まると略式命令を出しますが、この命令が正式手続の判決に相当する裁判書きです。

(2) 検察官から略式起訴を受けた担当裁判官は、起訴状と共に届けられた事件記録を見て、略式裁判がふさわしくない案件であると判断した場合は、略式命令を出さないで、正式裁判に切り替える決定をすることもできます。この決定がなされると、最初から正式裁判の請求(いわゆる公判請求としての起訴)があったものとして扱われます。正式裁判に切り替える決定をした場合は、直ちに裁判所から事件記録は検察官へと返還されます。

ポイント③ 略式命令も前科になります。

(1) 先にも触れたとおり、略式命令は正式裁判の判決に相当する有罪の裁判ですから、確定すると前科がつきます。

(2) 略式命令の内容(例えば罰金額)に不服があるときは、略式命令を受け取った日から14日以内に正式裁判の請求をすることができます。この請求は、略式命令を出した簡裁に書面で行う必要があります。正式裁判の請求があると、改めて正式の公判手続が始まります。

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