交通事故

2024年5月17日に成立した改正道路交通法による自転車の罰則強化は2024年11月1日に施行されます。

この記事を書いたのは:高橋 寛

この記事では、自転車走行中の携帯電話使用(ながら運転)や酒気帯び運転の罰則を新設した改正道路交通法について解説します。

 愛知県春日井市に住むDさんは39歳になる会社員です。職場が同じ市内にあるDさんは、片道約15分ほどかけて自転車通勤していますが、近いうちに自転車の罰則が新設されるという話を聞いて、その内容が気になります。

1 自転車にも反則行為が創設

 2024年5月24日に改正道路交通法が公布されました。改正法は、自動車やオートバイと同じく、交通違反者には反則金を納付させる「青切符」の制度を採り入れ、2026年春ごろまでに施行される予定です。

 最近は自転車の悪質な交通違反が増加しつつあり、自転車と車、自転車と人との事故が増えています。そのため、自転車による交通事故を抑制する方策として道路交通法を改正し、自転車にも自動車やバイクと同じように反則金制度が導入されることになりました。

 交通違反が認められると、違反の内容に応じて、青切符または赤切符が違反者に交付されます。「青切符」、「赤切符」は、交通違反者の責任を問う手続きにに関する書類ですが、次のような違いがあります。

 青切符=軽い違反に交付される切符です。切符に記載される反則金は行政罰としての課金です。青切符に記載  された金額を納付すれば刑事事件になることはありません。自動車の場合は、一時停止違反や駐車違反などが対象です。反則金を期限内に納付しない場合は、刑事事件として警察から検察庁へ事件が送致され、検察庁から裁判所へ起訴されて罰金などに処せられ、前科が付きます。

 赤切符=重い違反に交付される切符です。この赤切符が交付される違反には6点以上の違反点数がつき、自動車の場合は運転免許停止や免許取消しとなるとともに、起訴されて罰金や懲役(拘禁刑)に処せられて前科が付きます。自動車の場合は、時速30㎞以上の速度違反や無免許運転、ひき逃げなどが赤切符の対象になります。

2 反則金と罰金の違い

 交通違反をした時の違反金には、反則金と罰金があります。比較的軽微な交通違反の反則行為に対しては行政責任を問う「交通違反告知書」が交付され、これがいわゆる「青切符」です。

 また、無免許運転や酒気帯び運転など重大な交通違反に対しては刑事事件を問う「道路交通法違反事件迅速処理のための共用書式」が交付され、これがいわゆる「赤切符」です。

 反則金=交通違反には、一時停止違反などの軽微な違反から、無免許運転や酒気帯び運転などの重大な違反まで色々あります。これらの交通違反を全て刑事事件として裁判を行うとすれば、裁判所にも違反者にも多大な負担がかかります。そこで、軽微な違反を反則行為として定めた上、違反者に行政上の制裁金として反則金を納付させることによって刑事処分の対象から外れさせる仕組みが導入されたのが交通反則通告制度です。

 納付方法=反則行為が認められると「交通反則告知書(青切符)」と「反則金仮納付書」が交付されます。この告知書を受け取った日から8日以内に銀行・郵便局で窓口が開いている平日の時間帯に現金で納付すれば、手続き完了です。水道料金などの公共料金はコンビニでも納付できますが、反則金はコンビニでは納付できません。また、分割払いや小切手などの有価証券、交通反則通告センターへの現金書留による郵送での納付もできません。必ず銀行または郵便局で現金による納付が必要です。

3 反則金支払期限を過ぎた場合の手続き

(1) 反則金の支払をうっかり忘れて納付期限を過ぎた場合は、改めて反則金の通告を受け、新しく納付書を受け取る必要があります。

 手続としては、交通反則告知書に記載された指定出頭日に指定の交通反則通告センターに出頭します。その際、交通反則告知書と、期限の切れた反則金納付書を持参します。出頭すると、交通反則告知書と本納付書が渡されます。これらの書類を受け取った日から11日以内に、銀行か郵便局で反則金を納付すれば完了です。

(2) 遠方に住んでいるなどの理由で、交通反則告知書に記載された指定出頭日に交通反則通告センターに行くことが出来ない場合は、郵送で通告書と納付書を受け取ることもできます。

 期限内に反則金を納付しなければ、告知から1カ月から2カ月後に、自宅へ新しい交通反則通告書と本納付書が郵送されてきます。その後、納付書に記載されている期限内に納付すれば手続きは完了です。ただし、郵送で告知書と納付書を受け取る場合は、郵送料が反則金に加算されます。

     

4 今回改正される道路交通法は、16歳以上の自転車運転者に適用されます。

 信号無視や携帯電話を使用しながらの運転、酒気帯び運転を含む100を超える項目の違反が対象になります。

 ながら運転は、片手で運転することになる上、前方への注意力が散漫になって大変危険です。交通ルールを守り、安全運転に努めましょう。

 ながら運転の例としては、携帯電話を使用しながらの運転、、傘をさしての運転、イヤホンを付けたりしながらの運転などです。

5 今回の改正で新設される自転車への罰則は2024年11月1日から施行され、その罰則は次のとおりです。

 ながら運転=6月以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金。実際に危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役(拘禁刑)または30万円以下の罰金。

 酒気帯び運転=3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金。

      

6 自転車でながら運転や飲酒運転を繰り返す違反者には、自転車運転者講習の受講を命令できる道路交通法施行令の改正も2024年11月1日に施行されます。

 現行の道路交通法施行令は、自転車運転者講習の対象違反者として

① 信号無視

② 通行禁止違反

➂ 歩行者用通路徐行違反

④ 通行区分違反

⑤ 路側帯進行方法違反

⑥ 遮断踏切立入り

⑦ 交差点における優先違反 

⑧ 交差点で右折する場合の左折車・直進車妨害

⑨ 環状交差点における進行違反

⑩ 指定場所一時不停止

⑪ 歩道における車道寄り通行遵守違反

⑫ 制動装置不備

⑬ 酒酔い運転

⑭ 安全運転違反

⑮ 妨害運転

 を定めていました。これらの行為を3年以内に2回違反すると、自転車運転者講習の受講命令が出される運用になっていました。これが今回の改正で

⑯ ながら運転

⑰ 酒気帯び運転

という二つの行為が追加されました。

7 自転車運転者講習は、次のような流れになっています。

 自転車を運転して3年以内に2回以上危険な違反を繰り返すと、交通の危険を防止するため、都道府県公安委員会が自転車の運転者に講習を受けるように命令を出します。

 講習は、命令された日時・場所で3時間実施されます。講習を受ける際は講習手数料が6,000円かかります。

8 自転車に限らず交通問題でお困りの方は、経験豊富なスタッフが対応させていただきますので、お気軽に旭合同法律事務所へお声掛けください。


この記事を書いたのは:
高橋 寛