単身赴任でも車の変更登録が必要でしょうか?
この記事を書いたのは:高橋 寛
1 住民登録を変更せず、車ひとつで単身赴任した場合、車の変更登録をする必要があるのでしょうか?
小牧市に住んでいるAさんは、名古屋にある本社に勤務していますが、3年間の約束で福岡支社へ転勤することになりました。家族を小牧の自宅に残しAさんは福岡へ単身赴任です。
魚釣りが趣味のAさんは愛車が手放なせないので、手荷物を車に積んで福岡へ赴任しました。3年後には名古屋の本社に戻れるということで、Aさんの住民票は小牧市の自宅にしたままです。
Aさんは、車の変更登録をする必要があるのでしょうか?
車の登録内容に変更が生じたときの手続きについて概略を説明し、その手続きを行わない場合のデメリットについても解説します。
2 車の登録内容を変更する手続きは、車の種類によって手続きを行う機関が違います。
(1) 登録自動車の場合は、運輸支局などで変更登録や移転登録の手続きを行います。
登録自動車は、ナンバープレートが白色や緑色の自動車です。
(2) 変更登録というのは、その車を日常的に使用・管理する場所すなわち使用の本拠地などを変更した場合に行う登録です。
一般的には、転居によって住所を変更した時に、所有者または使用者の住所変更の登録をします。
市町村の合併などによって行政区画や土地の名前が変更された場合は、変更登録の手続きを行う必要がありません。
住民票を変更しないで単身赴任した場合でも、車を使用する本拠となる地が変わるのであれば、赴任先の住居地を管轄する運輸支局等で変更登録を行う必要があります。
使用の本拠地を変更しても、同じ運輸支局の管内であれば、車の登録ナンバー(ナンバープレート)は変わりません。異なる運輸支局の管内へ変更する場合は、車の登録ナンバー(ナンバープレート)が新しくなります。
Aさんの場合は、福岡で変更登録をして、新しいナンバープレートを付けてもらいます。
(3) 移転登録は、車の所有者が変わったときに行う登録のことです。売買、贈与、相続などで車の所有者が変更になったときは、所有権が移転したことを必ず登録しておく必要があります。
登録自動車は、この移転登録をしておくことが第三者に対して所有権を主張する場合の対抗要件です。
(4) 軽自動車の場合は、軽自動車検査協会事務所・支所で、自動車検査証の記載事項の変更手続きを行います。
軽自動車は、ナンバープレートが黄色や黒色の自動車です。
(5) 車の所有者が変わったとき、車の使用の本拠地を変更したときなどに変更手続きが必要な点は、登録自動車の場合も軽自動車の場合も同じです。
その手続きを申請する先が運輸支局(登録自動車)か、軽自動車検査協会事務所(軽自動車)かという違いがあります。
(6) 参考までに、バイクの住所変更手続きについて説明しておきます。
〔道路運送車両法上のバイクの区分〕
⒈原付(排気量が125 CC以下のバイク)
⒉軽二輪(126 CC~250 CCのバイク)
⒊小型二輪(251 CC以上のバイク)
〔原付の住所変更手続き〕
ア 変更手続きは、居住する市区町村の地方自治体の役所で行います。
引っ越し先の住所が別の管轄区に変るときは、まず、前住所の市区町村で廃車手続きをします。
前住所の役所で廃車手続きをするとき用意するものは、
①軽自動車税廃車申告書兼標識返納書(廃車申告書)
②標識交付証明書(これまで付けていたナンバープレートを受け取るときもらった書類)
➂身分証明書(運転免許証など)
④ナンバープレート(自分で外して持って行く)
⑤印鑑です。
転居先の住所が同じ市区町村のときは、廃車の必要がないので、廃車申告書は不要です。ナンバープレートを外す必要もありません。
イ 新住所に移転した後は15日以内に原付の使用本拠地の市区町村の役所に行って、前住所地の役所でナンバープレートを返却した際に交付された廃車申告受付書を提出して登録を申請します。
申請が終わると、新しいナンバープレートと標識交付証明書が交付されるので、受け取ったナンバープレートを自分でバイクに取り付けます。
〔軽二輪の住所変更手続き〕
この場合は変更手続きは運輸支局です。
原付と違い、新住所地を管轄する運輸支局で住所変更手続きを行います。自賠責保険に加入しているバイクに従来からのナンバープレートを付けたまま運輸支局へ乗って行きます。
変更手続きが済むと、新たに受け取るナンバープレートを付けて帰ってくることができます。
住所変更手続きのとき持って行くものは、①軽自動車届出済証(車検制度のない軽二輪では、車検証に代わる大切な書類)、②自賠責保険証書、➂新住所の住民票、④ナンバープレート(運輸支局に着いてから自分で外す)、⑤印鑑です。
それ以外の記入を要する書類は、運輸支局に用意してあります。
〔小型二輪の住所変更手続き〕
変更手続きは運輸支局です。手続きの進め方も軽二輪と同じです。違うのは、小型二輪は車検制度があるため、車検証を持って行く必要があります。
3 車の変更登録手続きを行わないで放っておくと、どのような不都合が起きるでしょうか?
小牧市に自宅があるAさんは、名古屋本社から福岡支社へ単身赴任しましたが、3年経てば転勤で名古屋本社に戻れるのだからと思い、車の変更登録をしないで、尾張小牧ナンバーのまま令和3年4月から福岡での単身生活を始めました。
9月初めの日曜日。Aさんは愛車に釣り道具を積んで海釣りの目的地に着きました。ところが、コロナ禍の非常事態宣言中に県外ナンバーの車で遠出してきたと思われたAさんは、釣り場の駐車場で注意を受けました。
Aさんは、会社の社員証を見せて「福岡で単身赴任しており、県内に住んでいる者である」ことを説明し、駐車を許可してもらうことができました。社員証を持参していたので助かりましたが、持参していなければ、その釣り場では駐車できないところでした。
その他にも、変更登記の手続きをしないで放っておくと、次のような不都合が生じます。
(1) 税金や保険の通知が届かない。
車の変更登録を行っていないAさんは、車検も小牧で受けなければならないし、自動車税の通知や保険の通知も小牧の自宅へ届けられ、単身赴任先の福岡には届きません。
自宅の家族と頻繁に連絡をとっていれば、それらの通知を転送してもらえますが、令和3年10月から郵便配達が従来より遅くなるため、初めから福岡へ通知してもらえる場合に比べて、1週間か10日くらいはAさんの手元に通知の書類が届くのが遅くなります。
(2) リコールの案内が届かない。
車の欠陥に関する重要な案内がメーカーから通知されても、福岡に届かず小牧の自宅に届けられます。
(3) 車の所有者が変わったにもかかわらず、移転登録を行っていない場合は、第三者第に対して、その車の所有権を主張する対抗要件がありません。土地について、所有権移転登記を受けていない場合と同じです。
(4) 移転登録を行っていない場合は、税金、保険、リコールの通知などが現在の所有者に届かず、前の所有者に届けられます。そのため、思わぬトラブルが起きます。
(5) 万一の盗難とか事故のとき、登録してある所有者・使用者と現在の所有者・使用者が異なる場合は、その確認が遅れます。確認のための資料を揃えるにも、時間と費用がかかります。
(6) 前所有者との無用なトラブルを防ぐため、また、万一の盗難や事故の際にスムーズな対応のためにも、車の所有者や使用者に変更があったときは、必ず移転登録を行っておきましょう。
(7) 変更登録や移転登録を怠ると、道路運送車両法に定める罰則が適用されるおそれがあります。
道路運送車両法109条には、「変更登録(11条1項)、移転登録(12条1項)の申請をしなかった者は、50万円以下の罰金に処する。」旨定められています。
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高橋 寛